2009/06/21

横浜市電1104号

 横浜市電1100形は昭和11年に5両が製造された。現代でも京浜急行の快速特急の一部で見られるようなクロスシートを採用し、「ロマンスカー」などと呼ばれた。ほぼ同時期に神戸市電700形もクロスシートを採用して新製されている。東西の港町で同じような電車ができるということは単なる偶然といってしまえばそれまでだが、何らかの風潮を反映しているようにも思われる。
 2009年現在の日本でも、ひと握りの富裕層に富が集中し、中流層が徐々に消失しつつある。非正規労働の是非は別としたとしても、勤労に見合った所得が得られない層が増加しているのであれば、個人消費が伸びないのは当然だろう。しかし、東京には流行っている店もあれば、東海道線のグリーン車などは連日通勤客で満席である。
 長嶋茂雄や村山実が生まれた昭和11年もそんな時代であったのではないか。当時の日本は競争も激しく、階級が強く意識された社会であったと言われている。華やかな1100形も10両の旧型車を5両で代替したわけだから、リストラ形の新製であったといえる。
 とまれ、1100形は戦後にロングシート化され、さらにワンマンカーにも改造され、昭和47年の横浜市電全廃まで活躍した。1500形などに比べると古さは否めず、ワンマンカー表示やバックミラーを装備した姿にも、無理して長期間使用した感じは否めない。
【撮影:佐野次郎 2009.6.13横浜市電保存館】

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