2009/06/21

横浜市電1311号

 1300形は昭和22年に終戦直後の輸送力確保を目的として30両が製造されたものである。限られた資材でなるべく多くの車両を作るために、運輸省による標準設計に基づいて製造された。そのため大阪市電1700形や西日本鉄道北九州線500形などの同系車が存在した。
 1300形は全長13メートル、3扉の大型車両である。路線バスより一回り大きいサイズである。このような電車が道路の真ん中を走っていることは、私の感覚では想像ができない。残された写真により、その雄姿を偲ぶのみである。野毛の坂道を走る姿、打越のガード橋をくぐる姿、そして伊勢佐木町を通過する姿、できれば実際に走るところを見てみたかった。
 また1300形は横浜市電では最後まで車掌が乗務していた車両である。現代では、路面電車より遙かに輸送力が大きい地下鉄でさえもワンマン運転を行う路線が増えてきている。
 1300形は、昭和46年に横浜駅前ー山元町間を結ぶ3系統が廃止されるまで活躍した。山元町の終点あとには平成の世に至るまで市バスの定期券売り場が残り、市電の終点の痕跡をわずかに残していた。また山元町は現在も個人商店が多く残り、昭和を感じさせる商店街であり続けている。
【撮影:佐野次郎 2009.6.13横浜市電保存館】