現代の通勤電車は車体長20メートル、片側に乗降扉4か所というレイアウトが一般的ですが、この構成で最初に量産されたのが1944年に登場した「ロクサン形」こと63系電車です。1949年までに807両が製造されました。
戦時体制下における輸送力の確保を目的として製造された電車で、製作の簡素化を極限まで追求した電車でした。安全面では十分でなく、1951年に京浜線の桜木町付近で多くの犠牲者を出した電車火災事故を起こしてしまいました。いわゆる「桜木町事故」です。
63系は1951年から53年にかけて窓の可動化をはじめとした安全対策の強化が行われ、73系に改造されました。1952年から57年にかけて490両が製造された73系としての新製車も加わり、戦後の経済復興に貢献した電車です。東武・小田急や山陽電鉄など民鉄でも導入されました。
40代以上の方は、横浜線や南武線で床が板張りになっている電車に乗った記憶がないでしょうか?あの古臭くて車内にポールが立っていた電車が73系なのです。ちなみに小田急のロクサン形は1800形として活躍し、その後秩父鉄道に譲渡されたのをご存じの方もおられるかもしれません。
【撮影:佐野次郎 2011.6.9】